【これも、コピーライターの視点_122】


<時間感覚>

効率最優先の時代から、思考や創造という手間と時間のかかる「slow」を寛容できる時代へ。この変化は明らかですが、わたしたちは、どうしても急いている感が否めません。とくに子育て世帯は、子どものリズムと親の仕事のリズムにより、急く心理的なプレッシャーが二乗になるような感覚があります。企業は業績の上がっているところはゆったりとしている傾向にありますが、業績の悪い企業は、急いて、急がば回れに耐えられず、社員を無駄に疲弊させている現実を目にすることもあります。

時間という概念が、わたしたちの速度感覚を決めているのではないか。ふとそう思うことがあります。企業の時間は、おそらく「決算」による縛りがもっとも大きいのではないかと思います。年に1回。納税の義務もあります。それにむけて、半期や四半期の決算、毎月のバランスシート、日々の経理などがあるのでしょう。決算が2年に1回で良ければどうなるのだろうか。株式市場の活況が失せていくのかもしれません。それは、成長だろうか、後退だろうか。

コピーライターとして、創造の仕事をするとき、もっとも確保しなくてはならないものは、時間です。しかし、その時間は、「作業」の時間に比べて、忍耐が必要。作業とは、メールを返すなど、サクサクできること。作業では仕事は生まれず、生まれる条件は整うかもしれませんが、創造に至ることは少ない。教育も同様。知識・技能を量ではかる時代は、スピードも要求された。ドリルを時間内にできるか、というようなこと。しかし、「思考力・判断力・表現力」の時代に、子どもが必要なのは、考える「時間」であり、表現する「時間」です。

企業に呼ばれて、言葉を軸とした経営の改善に取り組むとき、「時間感覚」というものが「効率最優先」の時代から柔軟に変化していなければ、その企業にその取り組みが定着することは難しい。最近、そういうことを感じています。わたしたちは、速度の速くなることが文明の進歩であり、良いことだということが刷り込まれてしまっているのかもしれません。新幹線の次は、リニアモーターカーです。それはそれでたしかに進歩ですが、そこにslow / slownessな選択肢に積極的になることが重要なこと。時に歩き、ときに自転車で行けば、違った景色も見える。創造のはじまりです。


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