この時代に!
企業が商品やサービスの認知を広め、消費者に購買行動をとっていただくまでに必要な言葉が少しずつ変わってきています。栄華を極めたマス4媒体に載せる言葉から、ネットの出現によって検索されるための言葉、つまりSEO対策された記事的なものが必要とされ、検索にGoogleではなくSNSなどが活用され、現在、チャットGPTの出現によって、検索という行為も消費行動の全てから、選択肢の一つになろうとしているのかもしれません。
今、世の中のコピーライターがどのような仕事をしているのか、人それぞれで興味のあるところですが、先日、you tubeで商品をPRしたいのだが、商品の誕生の背景から特徴までをお話するので、you tubeの構成を考えていただけますか?という問いかけがあった。なるほど、それはチャットGPTにするには、まだ手間なのだろうか。担当者の頭に混沌と詰まっている知識をいったん形式知化し、それをチャットGPTに前提条件として入力し、番組の台本を作れと命令すると仕上がってくるように思う。できない話ではないように思うし、どのようなものができあがってくるのか見てみたい。
その他、それが部分最適としてyou tube番組にはなったとしても、そのメーカーさんの世界観に合致するのか、いわゆるブランディングの観点で全体最適を見直し、磨くという作業も、まだAIに依存するには入力の手間がかかりそうだと思う。時間の問題だろうか。AIの発達に依らず、経済活動は物事を伝えるという過程、つまり言葉がどうしても必要で、その正確性や的確性、妥当性、合理性において人の良さを出せるコピーライターでありたいと思います。
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詩的想像力
今朝の朝日新聞の「折々のことば」(鷲田誠一)は、オルテガ・イ・ガセットの言葉。
「国家は、成員に共通した一つの過去をもつ前に、その共通性を創造しなければならない。」それに先立ち共通性を「夢み、欲し、計画せねばならない」と続く。国家とは出生を異にする諸々の集団がその共存をめざして立てる協同のプログラムだ。だから、その存続には詩的想像力が必要だと、「大衆の反逆」(神吉敬三訳)から紹介。
国家を企業に変えても言えることだと思う。その存続には詩的想像力が必要とは、言葉で構想し、語り、伝え、広げ、刻み、更新しつつ、共感の輪を広げていく営みだと理解しました。もちろん言葉だけではなく、ビジュアルやフォトグラフであることもあると思う。しかし、緻密に正確にとなれば、言葉の助けは必要だろう。
出生や過去の違う人たちが、いっときでも同じ夢を見て、同じ言葉を握りしめて、日々の時間をともに過ごす。チームとか組織とか、その意味で稀有だし素敵だなと思う。それが広くは国家となれば、この世で同じ時を過ごせる私たちもまた、素晴らしい存在だなあと思うのです。言葉から存在のありがたさを思う朝。
試みとして
振り返ればコピーライターの黄金時代とも言えた糸井重里さんが1行100万円とも1,000万円とも言っていた時代は過ぎ去り、AIでも書ける時代に、コピーライターの意味はあるのか。その意味または価値を自らの手で切り開く時代に差し掛かったように思います。
一つの私の仮説は、言葉はエネルギーであり、エネルギーや熱意、魂を込めた表現には相応のリアクションが来るであろうというこの世の法則みたいなもの。バイアスというものもそうですね。バイアスとはネガティブなものではなく、極めて人間らしい主観でもあり、その匙加減は、まだAIでは十全に行えないように思います。時間の問題かな。
いずれにしても、それでも言葉をつむぎ、コピーや文章を書いていくという営みは、エネルギーやバイアスに一つの価値を見出す人とどのくらい共鳴できるか。これもまた実験的で面白い。
すでに6年目に突入している国語や英語を子どもに教えるという仕事は、正しい言語運用能力を磨く上で、コピーライターの職と相乗効果になっています。さらに精進して、AIとの共存を図りたい。AIにできることはお任せ、できないそれでもと注文のいただけることには最大のエネルギーを投下したいと思います。
少しずつ感じる変化
求人情報を書くという仕事は、今も昔もコピーライターの仕事として変わらない。しかし、年々暖簾に腕押しというか、書いてても虚しさが残る。ちょっと前までは、いろんなことを犠牲にして、就職や転職を希望する組織に自分を合わせにいくことが暗黙の了解であり、そのような犠牲の上に企業と求職者のお見合いが成立した(しやすかった)のだと思う。
しかし、今は、犠牲にするのはおかしい、あれもこれも大事なんだ、という主張が通りやすい時代空気になってきた。子育てパパ、親の介護などはその一例。そんなものを犠牲して働くなんておかしいという主張を、企業はある程度聞かなくてはいけない。もっと目には見えない個人的な価値観は山ほどあると思う。多様性ですね。
企業とはこういうものだから、組織とはこういうものだから、というこれまでの価値観や常識といった類のものも、今の求職者には一つひとつ点検、検討する対象であり、納得しないと動かない時代だと感じています。当然、「俺はこうやってやってきた」と犠牲を主張し、正当化する向きも出てくる。両者の溝はおそらく一生埋まらない。どちらが正しいということもなく、そういう時代空気を感じるという話。そういう空気感を文章で伝えるのは、難しい。難しいが、やらないと企業と求職者のお見合いは、うまくいかない。うまくいかないと、企業は露出を増やす。結果、求人サイトばかりが増えて、意味のないコンテンツが宇宙に拡散されるばかりではちょっとね・・・だから。
ありがとう! これからも!
実現したい未来がある。すると、自然と熱い思いが芽生え、語りたいメッセージが生まれる。人が言葉を求めるのは、このような時だと思います。コピーライターとして務まるには、この思いの熱量に等しいか上回る熱意を持って向き合えることが条件だと近年思うようになりました。
CONERIは、明日で18歳になります。今日までご愛顧をいただき、支えてくださった皆さまに感謝申し上げます。18歳は成人ですが、大人のふりをせず、いつまでも熱いコピー好きでいます。18年目も一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。