【これも、コピーライターの視点_72】


<無名でも良いもの>

日曜のあさに、新潟の「五泉シルク」
の紹介をするテレビ番組があり、
ぼんやりと観ていました。
お坊さんの着る着衣などに
用いられる生地のようで、
生地の厚さが他にはできないもの
だということです。

モノはいい。
しかし、大きな消費は見込めず、
産地は元気がないというのは
この国に見られる一つの傾向です。

わたしは、ふと、コマーシャリズムに
毒されたかなと思いました。
コマーシャルをすることで
広く社会に知れわたるのは良いのですが、
それはモノの良し悪しや質の高さに
必ずしも比例するものではなく、
本当に良いものが、静かに息を引き取ることも。

こういう仕事をしていながらナンですが、
わたしは、無名でも誠実に力を尽くし、
地道にやっている仕事(人)が好きです。
コマーシャルとは無縁に、
独自の世界観で市場を確保できると
いいなあと願いながらテレビを観ていました。
それは、情報の時代に生きるわたしたちの
意識も問われているように思います。
教育で言うところの、
メディアリテラシーというやつでしょうか。


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【これも、コピーライターの視点_71】


<技術と言葉>

世に貢献しているあたらしい技術も、
言葉が先。願いが言語化されたときに、
技術と社会の接点に焦点化されて、
開発が加速し、社会に貢献できるものとして
定着してゆきます。

世には、研究のための研究もあり、
それを企業が社会的有用性を感じて
買い取るケースもありますが、
企業が営利で取り組む研究開発は、
社会に対する疑問や信念、願いが
言語化されていないと、
社内の求心力もなくなるし、
もちろん市場にも出ていくのが困難になります。
はじめに言葉ありきです。


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【これも、コピーライターの視点_70】


<曖昧さをベースにしないために>

ご存知の方も多いと思いますが、
京都の食堂「佰食屋」を大阪の知人から教わった。
1日限定100食だけを提供するから「佰食屋」。
あさ9時半から整理券を配るのだそうです。

わたしは行けなかったので、ネットの情報によると、
店には冷蔵庫もおいていないとか。
「新鮮なものを食べてほしいから、
当店には冷凍庫 がありません。
毎日100人分の食材を仕入れ、
100人にご提供する」のだそうです。

顧客満足だけでなく、
従業員満足も追及した結果が100食。
早朝出勤や残業を無くして、
ランチのみで終了。
定時には帰宅するというのでしょう。
働き方改革の模範的な例です。

自社の価値観をネーミングにして市場に伝える。
曖昧さがありません。
働き方改革とは、曖昧さを排除することです。
残業をやめよう!と言いながら、
顧客に言われた仕事を請けてしまう。
旧来の文脈では無理もないことでしょうが、
とても曖昧で、その社長は、社員に対する
説得力はゼロでしょう。

自社のあり方を言葉にするということは、
覚悟を示すことであり、
曖昧さを排除することです。
残業は、「いつか」なくなりません。
「いつか」なくなるのなら、
それは会社も同時になくなる日でしょう。
意思をもって「今日」無くす。
そこには、市場に対しても
共感できるメッセージが伴うことで、
顧客の信頼や尊敬のまなざしを
自社の誇りとできるチャンスも転がっています。

自社の矛盾を見出し、
その曖昧さを排除することは、
社員に対しても、社外に対しても
力強いメッセージになり得ます。


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【これも、コピーライターの視点_69】

<で、どうしたいのか?>

香川県の広報誌で、
県知事とあたらしく就任された
香川大学長の対談。
学長が、企業へのアンケートで
学生のことをどう思っているのか
アンケート結果を紹介していました。
企業の回答「思い切った提案や発言ができない」
「リーダーシップが取れない」。

なぜ、否定形の回答なのか。
「もっと主体性を発揮してほしい」
「ぶっ飛んだ、常識にとらわれない着想を
してほしい」
というのでは、ダメなのか?

おそらく、言っている企業にも
そこまでの力強さや危機意識、切望、渇望が
ないからです。要は他人事で、たらいの上から
学生を眺めてもっともらしい感想を言っている。

わたしはそんなふうに感じました。
その回答者は、学生のささやかな主体性の芽を
おそらく見落としているのでしょう。
なぜなら、自分にその小さな可能性を感じ取る
センサーがないからです。

希望は、肯定的な言葉で言おう。
社長が、社員に対して言うのも同じ。
できないことは、しようとしてできないことかもしれない。
しようとしたけどできない理由をつくったのは、
常識的な発言を繰り返すあなたかもしれない。
プラスの言葉の呼応が、
意識を覚醒させ、突き抜けさせてくれます。
小さなことですが、大事なことです。


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【これも、コピーライターの視点_68】


<すべて、同じ「人」の心だから>

私たちは、人と会ったとき、
どのような印象を抱くか?
・やさしそうな人だな。
・おおらかな人だな。
・笑顔が素敵な人だな。
・明るい人だな。
・快活な人だな。
・面白い人だな。
・誠実な人だな。
・もの静かな人だな。
・よく考えている人だな。

いくらでも挙げられますが、
企業のコミュニケーションにおいて、
例えば広告を打ち出した場合、
広告は見られて3秒。
上のような印象を与えることができれば
それはごく自然に人の心に入ることができた
と見るべきだと考えています。

コピーライターやデザイナーは
緻密に考えて、広告を設計し、制作します。
しかし、人と人が会ったときの心の動きと
同じこと以上のことを期待するのは
少し無理があるし、
広告はそこまで万能ではないと謙虚にも
ならなくてはいけません。

その次に、「もう少しこの人と
時間をともにしてもいいな」
と思わせることも、最初の3秒の役割。

企業側は、常に盛りだくさんのことを言いたい。
しかし、それは初対面で
マシンガントークを浴びせられるようなもの。
わたしは、ご遠慮願いたい人です。




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