【これも、コピーライターの視点_19】
「広告賞」というものを
少しお話してみたいと思います。
わたしは、2006年に、コピーライターの登竜門
と言われる「宣伝会議賞」をいただいて
コピーライターとしてデビューしました。
コピーライターとはとくに資格があるわけではなく、
そうだとしても、広告賞を獲っておくことくらいは
説得材料として必要だろうと考えていました。
その後、
2006年 C-1 グランプリ(東京コピーライターズクラブ)準グランプリ受賞
2007年 朝日広告賞(月間賞)受賞
2008年 第38 回四国新聞広告賞(優秀広告賞)受賞
と受賞を重ねました。
それはそれで、広告代理店などとの仕事では
ある程度有利に働いたかもしれません。
同じ業界で、この賞の意味がまだ分かるからです。
しかし、企業と直接取引するときに、
いくばくの説得材料になったかは不明です。
経営者と話をするたびに、
クリエイターと事業者の生きている文脈が
まったく違うことを知らされます。
業界内で、表現を誉めあっても、
企業経営にそれがどれほど貢献したものかを語らなければ
経営者は動かない。
そう思ったとき、わたしは広告賞から
熱が覚めました。
所詮、業界内の自己満足ではないか、
ということです。
クリエイターが企業経営に貢献するという視点では、
表現は確かに有効な指標の一つですが、
それは、氷山の一角に過ぎず、
その下の表現に至る過程や戦略にこそ、
経営者にとって重要な要素が詰まっていることを
次第に理解するに至ったのです。
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【これも、コピーライターの視点_17】
多くの経営者は勉強熱心で、
本を読んだり、セミナーに出かけたりします。
そこで、経営のノウハウに近いものを
得ているのではないでしょうか。
わたしが経営者と二人三脚するなかで、
よく感じることは、
「それ、知ってる」という一言に
象徴されます。
学んだ知識と、現場とがリンクしていないのです。
現場での困りごとや課題をお聴きしたのち、
それを解くための理論を体系的に示したとき、
「それ知ってる」という言葉に出会います。
その社長の学びは無駄ではなかった。
しかし、現場での出来事との関連が見えないと、
無駄になっていた。
現場に入り、経営者と二人三脚するわたしの立場は、
実践を見通した理論、
実践から理論に戻す
という抽象と具体の名人であることが求められます。
社長がせっかく学んだ知識を無駄にしないために。
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【これも、コピーライターの視点_10】
コトに対するデザインではなく、
モノに対する意匠(デザイン)だって、
モノに対するデザインだって、
「課題解決」であった時代がありました。
それは、大量生産・大量消費の絶頂の時代。
モノがたくさんできると、
次は、その付加価値として「デザイン」つまり、
プロダクトデザインにおいて差別化し、付加価値をつけ、
高く売る、競合よりも選ばれやすくすることによって
販売力の課題を解決に導いたのです。
わたしの手元には、
「デザイン・ポリシー」という本があります。
(浜口隆一・中西元男著 美術出版社刊)
1964年に発行された本です。
大量生産・大量消費の真っ只中。
当時、デザインによって頭一つ突き抜けていた
企業の常連、資生堂、日本楽器、ソニーなどの事例が
並んでいます。倉敷国際ホテルというのもあります。
デザインによって烏合の衆から抜け出て
自社の存立価値を示した好例の企業群。
それは、モノにあふれた時代における
課題解決だったのですね。
そこから80年代に入り、
デザインは、「事業・企業のデザイン」
さらには「社会・文化のデザイン」へと
拡がりを見せるのです。
デザイン思考の本流が流れ始めますが、
目に見える「作品主義のデザイン」を
「デザイン」とする見方は、
いまだに根強く、
かえってそれは、デザインに対する
閉塞感と特殊性の要因になっている
のではないかと危惧しています。
閉塞感というのは、
金余りの企業が、ぜいたく品として
デザインを経営に活用できるという
偏った見方です。
デザインの本質は課題解決であれば、
すべての企業にデザイン思考は活用でき、
それこそが、たしかな未来を切り拓く。
そういう認識が、いまだにメジャーでは
ないように思われます。
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いま
いま、「これも、コピーライターの視点」というコラムを連載している。目下の話題は「デザイン思考」。課題の発見にはじまり、適切な問題設定と解決の見通し(仮説)を立て、コピーライターがエライのは、そこから「表現」を伴い、または、わたしのやり方だと、顧客を物語の一部として、同時にともに取り組む社員も物語の一部として、巻き込んでいくことです。そこには、人への愛情ややさしさの眼があります。決算書を分析して、「じゃあ、どうしようか?」となると、方向は2つで何かを節約するか、利を生み出すか。前者は税制などにかかわるので会計士や税理士の仕事ですが、そこにも、コピーライターは(わたしは)アイデアや方向性くらいは示せる。後者は、完全にコピーライターの(わたしの)仕事。「営業して顧客を増やしましょう」と言われ、「じゃあ、何をどうやって?」「逆に営業しなくてもいい方法とは」など、コピーライターの視点で解けることは多い。すべてのコピーライターが、とは言い切れないが、少なくとも、わたしは、ということ。
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【これも、コピーライターの視点_09】
中西元男氏が、グッドデザイン賞において
デザイン思考を評価したのは、1988年のこと。
岩手県の遠隔診療システムです。
県域が広く、冬になると雪に閉ざされて
行き来もままならない環境特性を持つ
岩手県の県内主要病院を結び、
診断情報をやり取りし、
中央病院の名医が処置の判断をし、
それを離れた地域病院が処置に活かす
通信ネットワークシステムが認定されたのです。
これは、岩手県のもつ気候特性からくる
医療の課題に対して、医療システムとして
その「解決」を促した一つの事例だと言えます。
つまり、課題解決=デザイン思考です。
当時の盛り上がりをわたしは実感レベルで知りませんが、
モノに対するデザイン、
つまり作品主義のデザインから脱したことは
大きな歴史の転換点だったのではないかと想像します。
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